【狂四郎2030】のあらすじや見どころ紹介！

【狂四郎2030】のあらすじ・概要

世界的な人口爆発による食糧問題が原因により2019年に第三次世界大戦が勃発、地球上の約80%の人間が死亡した。世界中が血で血を洗う争いに飲みこまれていったが、日本はすべての軍事力を防衛に注ぐことによって大戦を生き残る。

そして大戦終結から5年が経った2030年の日本で物語は動き出す。戦後の国家政策の一環であるバーチャマシン内の仮想現実で出会った狂四郎と志乃は互いに惹かれ合い、やがて男女の仲になる。だがそれはあくまでバーチャ空間だけのもの。日本では家族や恋人が男女隔離政策により離れ離れを余儀なくされていた。しかしそれ以上に狂四郎の志乃を想う気持ちは強く、狂四郎は国家への裏切りとなることを承知で彼女に会いに行くことを決心する。

【狂四郎2030】の登場人物

【狂四郎2030】の見どころ

二面性を持つ主人公が魅力的！

本作の主人公、廻狂四郎はそれはもうイイ奴である。バカでスケベで下ネタを連発するお調子者だが、やる時はやる剣の達人。そのうえ明るく人情に厚いナイスガイとくれば彼を嫌う人間などいないだろう。しかし狂四郎の中には自分でも抑えることのできない『狂気』が巣食っており、戦争が終わってなお克服できずにいた。

狂四郎は生まれながらにして「M型遺伝子異常者」と診断され、更生を名目に兵士としての訓練を積まされた。これもひどい話で作中の日本では遺伝子に異常があると将来犯罪者になる可能性が高いからと施設にぶち込まれ、ムリヤリ国のために戦わさせられるのだ。自分の意志とは無関係に暗殺や破壊工作をさせられていくうちに彼の心は壊れてしまう。ためらいなく人を殺すだけでなく、それにより充実感を覚えてしまうほどに。皮肉にも兵士としての資質や才能に恵まれた狂四郎は大戦を生き残る。数え切れないほどにその手を汚して…。

最愛の女房である志乃にリアルで会うためにお尋ね者となっても過酷な旅を続ける狂四郎。殺るか殺られるかの世界だ。生きるためには殺すしかない。そしてひとたび「殺人マシーン」としてのスイッチが入ってしまえばもう殺人を犯すことに微塵も罪悪感を覚えることはなかった。自分の中にもうひとりの自分がいるだとか、多重人格といったものではなく、彼は冷酷に残忍に薄ら笑いを浮かべながら廻狂四郎として人を殺すのだ。そんな状態の狂四郎にM型遺伝子異常のことを指摘してごらんなさい、お顔と胴体が泣き別れですよ。切断した首を刀で串刺しにしながら「気をつけなきゃ…………口は禍の元って言うだろ？」とか言うシーンはめちゃくちゃゾクッとする。

なんだか「るろうに剣心」を彷彿とさせる設定だが剣心は国の未来を想って飛天御剣流を振るっていたわけで、選択する余地のなかった狂四郎は純粋な戦争の被害者であることが哀しい。でもこの二面性が読者的には魅力なんだよなぁ。ザコいくせにイキってる悪役をあっさり切り捨てるシーンはスカッとするし、それに苦悩する狂四郎はすごく人間味がある。朗らかで気持ちの良い若者である表の顔と殺人狂である裏の顔。そのギャップが読者を廻狂四郎というキャラクターに惹きつけるのだ。

二人の一途な愛と葛藤

作者である徳弘正也先生は「狂四郎と志乃は言うなれば『ロミオとジュリエット』」とあとがきで語っており、作中でも二人のお互いを想う気持ちが痛いほど切なく描かれている。だが彼らは一方で、自らの本性を相手に知られてしまうことに異常なほど怯えているのだ。

狂四郎については先述した通り、自分が殺人鬼であることを志乃に知られたくない。彼女と出会ったことによって人間性を取り戻した彼だが、皮肉にも救出の道中で殺人鬼へと戻っていく。「こんな男が志乃を救うのか」と苦悩する狂四郎。

志乃は志乃で、その美貌が仇となりこれまで幾度となく下衆な男に弄ばれてきた。狂四郎にはそのことを打ち明け、彼も「かんけーねーよそいつらただの野良犬だ！」と承知の上で志乃を愛している。だがそれでも彼女の心は晴れない。狂四郎が愛しているのはバーチャ内の『志乃』であって現実の薄汚れた『ユリカ』ではない…そんな考えに囚われる志乃。

二人を結びつける絆が強いからこそ、それを失うかもしれない恐怖は計り知れない。会いたいけど会いたくない、そんな狂四郎と志乃の愛と葛藤も本作の見どころだ。

人間の闇の部分があらわになる瞬間にゾクッとする

心に闇を抱えているのは狂四郎と志乃だけではない。国家から厳密に管理、時には虐待される地獄みたいな世界で誰もが限界ギリギリで生きていた。そんな異常な日常が狂気を育むのか、追い詰められて本性がむき出しになるのかはわからないが、その臨界点を超えたときキャラクターの心の闇があらわになる。不安・恐怖・欲望などがトリガーとなり、ときには最悪の結末を迎えることに…。

面白いというとアレかもしれないけど、これは敵側（つまり政府の人間）もそんな感じなのが面白い。遺伝子的に完璧な軍人が、DNAの奥に潜む残忍で狡猾なもうひとりの人格に苦しんだり。処刑人が斬首した人たちにまとわりつかれる夢を見たり、などだ。そういうのを見てゾクゾクしたり、怖いんだけどクセになっちゃう！っていう人にはめちゃくちゃおすすめです。

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【狂四郎2030】のまとめ

以上が「狂四郎2030」の漫画紹介でした。正直なところジョジョみたいに絵にクセがあるしグロテスクなシーンもかなり多い（特に首チョンパ）。そのうえストーリーも重いんだけど途中途中でギャグが挟まるので暗くなりすぎず、楽しんで読むことができると思います。ハマる人にはハマる本作品、少しでも興味を持った方はぜひ読んでみて下さい。