【伊藤潤二傑作集 双一の勝手な呪い】のあらすじや見どころ紹介！

　

【伊藤潤二傑作集 双一の勝手な呪い】のあらすじ・概要

夏休み期間中、父親の勧めで田舎の親戚である辻井家に遊びに行くことになった裕介と路菜。辻井家の人々は皆優しく二人を迎え入れてくれたが、そこには異質なオーラを放つ少年がひとり…。彼の名は『双一』といった。不気味な笑みとただならぬ雰囲気をたずさえた彼は、噓か誠か「呪い」の力を持っているという。常軌を逸した奇行によって周囲に悪意をまきちらす双一。特に路菜は彼との相性が悪く、散々な目に遭わされることに…。

【伊藤潤二傑作集 双一の勝手な呪い】の登場人物

【伊藤潤二傑作集 双一の勝手な呪い】の見どころ

呪いの力は本物。しかし結末はホラーにはならない

本作の主人公、クギ少年こと双一くんは本物の呪術者である！しかも作中では魔導書のようなテキスト類を使っている描写はなく、すべて独学で行っているみたいだ。なんという天賦の才…。陽キャへの屈折した感情を呪いへ転化し、周囲をはた迷惑な騒動に巻き込むぞ。気に入らない奴を腹痛で入院させたり小学校のクラスメイトをヒゲヅラにしたりと絶妙に嫌なラインをせめてくるのが特徴だ。

そんな神通力ともいえる不思議なパワーを持つ主人公だが、彼の凄さはそれだけにとどまらない。釣り糸を使ってポルターガイスト現象を演出したり、自作の超巨大なクモ型ロボに搭乗して同級生を追いかけまわしたりと人類の叡智をフル活用した嫌がらせを実行する。また、自身の良い噂をまるでサブリミナル効果のようにそれとなく周囲になじませて、自分の株を上げるという謎のマッチポンプ技術を備えていたりもするのだ。超能力者？呪術者？ペテン師？ここまでくるともはや彼という人間をどう形容してよいかもわからない。ジョジョで例えるなら、『波紋』の能力だけに頼らずトリックで相手を翻弄するジョセフ・ジョースターのような男である。

そして伊藤先生の作品ではめずらしく結末がホラーにならないのが本作の特徴とも言えるだろう。傑作集などを読んでいると大体の登場人物が惨死するのだが、双一の呪いはちょっとしたイタズラの範疇に収まるものでありそういった不幸は描かれない。とはいえしっかりホラー描写はあるので、怖すぎないホラー作品を読みたい人におすすめである。

双一の憎めないキャラクターがきっと好きになる

そんな並外れた能力を持つ双一くんは、それに反比例して人格が歪んでいる。自意識過剰で自信家、親の仇のように陽キャを憎んでおり、キラキラと輝いた青春を送っている人種を彼は決して許しはしない。和気あいあいとしている人たちを冷笑し、そんな彼を見かねて仲間に入れようとするとつっぱねる。もう放っとこうぜと無視すると根に持つという、小学生にしながらだいぶこじらせてしまっているご様子である。

と書くとなんか救いようのないクソ陰キャみたいになってしまうが、そういったところも含めて愛嬌のあるキャラクターなのである。動機は不純だが呪いにかける情熱ハンパじゃないし、強がっているけど根はビビリでしかもけっこうバカだったりもする。そんでたま～～～～～～に優しくて、でも良い奴すぎない。そんな憎めない少年である。

彼の家族はどうかというと皆良い人ぞろいで、というかクラス内にも悪意のある人間は誰一人としていない。別段いじめられている感じもしないし（一部女子に気味悪がられているけど）「やれやれしょーがないやつ」ぐらいに思われているのではないかと思う。そして嫌な人間がいないからこそ双一がヒールとして輝き、呪いも最後には失敗に終わる為後味が悪くならないのが本作のミソだ。

一話完結で話数も1巻分だから読みやすい！

一話完結型でしかも話数も1巻分で終わる為、好きなときに好きなだけ読める本作品。なんかヒマだな～面白いホラーコメディ読みたいな～と思ったら、本作をぜひ読んでみてはいかがでしょう！

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